SDGs な資源化、エコ・バイオトイレの効用
― 「水を使わない」「肥料になる」を特徴とする新型トイレ ―
正和電工株式会社 代表取締役 橘井敏弘
はじめに
国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の6番目「安全な水とトイレを世界中に」の課題解決に向け、正和電工が開発したバイオトイレBio-Luxが「水を使わないトイレ」「自己完結型のトイレ」として国内外から注目されています。
背景には、全世界の18億人が排泄物などで汚染された水を飲んでいるという現実とトイレを使用していない人、又はトイレを使用できない人は約24億人いると報道されていることがあります。
生活環境の近くでは「トイレを含む生活排水」が適切に処理されず、垂れ流し状態になっている為「河川や地下水は糞尿などで汚染」されており、近くの河川や地下水の水は飲料水として用いることが出来ません。ゆえに、きれいな水を手に入れる為に、女性や子供たちが生活環境から遠く離れた場所へ、何時間もかけて「水汲み」に行く事を強いられています。
すべての人が「安全な水ときれいな生活環境」を得られるためには、トイレや下水処理、ゴミ処理など「衛生設備が整った環境で暮らす事」が求められています。
し尿処理の問題点
し尿処理の方法は「水洗トイレが一番良い方法」として国内外共に普及拡大していますが、水洗トイレ方式は多くの課題を抱えている現実があります。
水洗トイレを含む生活排水は下水道の勾配で下水処理場迄ゆっくりと流れています。「汚れは沈殿する」ので沈殿物を除去する必要がありますが、沈殿物を除去する費用が自治体を悩ませており、維持管理費用の捻出が大きな課題となっています。
埋設されている管路の寿命は40年とされており、50年を過ぎている場所も多くあります。管路の改修工事が急がれていますが、自治体の多くは管路の維持管理費用を捻出するための手段として水道料金の値上げを検討していると報道されています。
文明の利器である水洗トイレですが、地震等の災害時には水不足や断水により使えず「全くひどいトイレ」となってしまいます。
加えて、水洗トイレは「臭わず清潔」と思われていますが、トイレ消臭剤が大ヒット商品になっていることからも、水洗トイレの室内は「かなり臭う」事が現実なのです。
排水管から下水の臭いが上がらないように「水でフタ」をしていますが「用便の臭い」はトイレ室内に充満するので排気口から外部へ出したり、消臭剤を活用したりしています。
バイオトイレとは
バイオトイレには「生物の力でし尿を処理する事」の意味を託しています。従って、水洗トイレもドライトイレも、水循環式トイレも、化学処理や燃焼処理に頼らず、「生物の力で処理している」という点で、全てがバイオトイレの範疇にあります。
本バイオトイレは普通のオガクズを人工土壌マトリックスとして利用した「乾式し尿処理装置」であり、「資源化・エコ、バイオトイレ」略して「バイオトイレ」と称しています。
バイオトイレは山岳トイレとして富士山や月山、屋久島や白神山地、旭山動物園や観光地、中国やロシア、ベトナムやインド等々、国内外で約3,500台が設置され稼働しています。
バイオトイレの特色
バイオトイレの特色は①水を使わない、②普通のオガクズを使う、③特別な菌は不要、④使用後のオガクズは肥料になる、⑤汚水は出さない、⑥トイレ室内は無臭、等々の特徴を持った地球環境にやさしい新型トイレで、SDGsの観点からも適した、21世紀の循環型トイレです。トイレ室内は空気の流れが下向きなのでトイレ室内は無臭になります。
※バイオトイレは処理能力の違いで機種が多くあります。
災害時に水洗トイレは使えない
水洗トイレの普及拡大により人類は実に便利で快適な日常生活を甘受するようになりましたが、電気やガス、水道などの文明の利器も、地震等の災害時には簡単に破壊され一瞬にして難民生活への転落を強いられることになります。
阪神淡路大震災や東日本大震災では建物や下水道設備が破壊され、下水処理場迄もが破壊された事により、水洗トイレが全く機能せず生活環境は悲惨な状態も経験しました。
このような災害が起こる前に、災害時のトイレ対策として「水が無くても普通に使えるバイオトイレ」が国策に採用され、避難場所の学校や公民館、ビルやマンション等などに併設されていれば良かったと思っています。
バイオトイレがし尿処理する原理
バイオトイレの中に投下された「大便や小便、トイレットペーパー」はオガクズの中で「蒸発と分解」で消滅します。屎尿全体量の約90%は水分なので、その水分を蒸発させるだけで全体量の90%は消滅することになります。
残った約10%は有機物なので、微生物が水と二酸化炭素に分解消滅させます。この時点でし尿はオガクズ中で消えたように見えますが、「蒸発も分解もしない」無機物は残ります。
無機物は「窒素、リン酸、カリウム」と呼ばれる肥料分ですが、肥料分はオガクズの空隙に付着し、この空隙が詰まったときが「オガクズ交換の時期」となります。オガクズ交換の目安は「1年に3回程度」です。
使用後のオガクズには屎尿に含まれていた肥料分がタップリ含まれていますので「土壌改良材や有機肥料」として再利用が可能になります。
おわりに
便所の規制に関して建築基準法第31条第1項、下水道法第11条の3に「下水道処理区域内においては、便所は水洗便所(汚水管が公共下水道に連結されたものに限る)以外の便所にしてはならない」と明記されている事から、内閣府規制改革推進室「国民の声」に「下水道処理区域内における便所方式の見直し」を過去12回提案していますが、国土交通省からの回答は曖昧で「明確な回答」はいまだ出ていません。
国土強靭化計画の一環として災害時のトイレ問題が残っています。地震等で建屋が倒壊を逃れても水洗トイレは使えず「トイレのない建物」になってしまいます。断水により会社の水洗トイレや自宅の水洗トイレが使えなくなります。会社や自宅等にバイオトイを設置する事が可能になれば、水不足や災害時のトイレ対策になります。
国土面積の4%弱の人口集中区に7割の国民が居住しています。人口集中区における災害時のトイレ対策として職場や自宅マンション等に「バイオトイレを各自個別に設置」する事で「水不足や災害時のトイレ問題」を解決する事が出来ます。水不足や災害時「仮設トイレやマンホールトイレ」を利用する為に高層ビルや高層マンションから降りてくることは困難なので、法律による「便所の規制」は早急に再検討する必要があります。水洗便所の持つ課題を補完する目的とSDGsなバイオトイレの普及拡大が求められています。