正和電工「駆除シカ分解処理装置」開発 “バイオトイレ”技術を応用
道によると、北海道では1990年代以降、エゾシカの生息数の増加による農林被害が深刻な社会問題となっている。 国の交付金等を活用し捕獲活動や侵入防止柵の整備など、総合的な対策により推定生息数は減少に転じているとは言うものの、まだまだ予断を許さない状況だ。
そんななか、水を使わず、オガクズに含まれる微生物だけでふん尿処理ができる「バイオトイレ」を製造・販売する正和電工は、この技術を応用した「駆除シカの分解処理装置」を新開発し、話題を呼んでいる。
同装置の外装はオールステンレス製で、処理層とスクリューはステンレスと鉄製が用意。 幅はおよそ1200ミリ×高さ1400ミリ×長さ7200ミリの直方体で、重量は約4トン。内部の発酵槽には、直径1100ミリほどの鋼製スクリューが取り付けられている。
処理手順は、発酵槽にオガクズを入れ、シャワーでオガクズの水分を調整後、シリコンラバーヒーターで発酵槽を60℃に加温し、死骸を投入する。 発酵槽内のスクリューが1時間ごとに正回転、反回転を繰り返し、死骸とオガクズを撹拌させることで、好気性発酵分解の促進環境を作り出し有機物分解を行う。 残った大きな骨は骨専用破砕機で粉砕し、一般廃棄物として処理する。
佐藤仁俊技術部長は、「使い方やメンテナンスが比較的容易なのが特長です。約2週間ほどで駆除動物はオガクズのなかで消滅します」と話す。
福井県大野市では、全国に先駆けて同装置2台と骨専用破砕機1台を導入した。
これまでシカやイノシシ、カラスなどの有害鳥獣の処理方法は、埋めるか燃やすかの2通り。 有害駆除獣が増加すると多額の焼却処理費が必要のほか、埋設についても場所の確保や重機を用いた掘削作業など、時間と労力がかかっていたというのが実情だ。
橘井敏弘社長は、「ありがたいことに、早くも評判を聞きつけた周辺の自治体や企業などからの引き合いが来ています。 道内でもこうした懸案を解決できるよう、豊富な経験と実績に裏打ちされた商品力で尽力していきたい」と意気込む。