ベトナムでのバイオトイレ普及に注力
正和電工の橘井社長らが、同社の主力製品であるバイオトイレなどの普及を目指して7月24日~30日にベトナムを訪問する。JICAなどと共に現地で説明会を開催する予定。実際にバイオトイレなどを運用することになる現地の人に正しい知識を伝え、将来の本格的な普及につなげたい考えだ。
世界遺産のベトナム北部・ハロン湾は、大小3000もの島から形成される風光明媚な地域。中国がベトナムに侵攻してきた際、竜の親子が現れて敵を破り、口から吐き出した宝石が島々になり散らばったとの伝説も残る。経済発展の進むベトナムではこの地を内外から旅行客の集まる一大観光拠点として開発しようとしているが、ネックとなっているのが排泄物の処理だ。
ベトナム政府の狙い通りこの地域に多数の観光客が集まれば、排泄物の量も急増するが、昔のように垂れ流ししていたのでは地域の環境が悪化して観光地としての魅力が半減し、衛生上の問題が人々の健康に悪影響を及ぼすおそれもある。かといって先進国のような下水道設備を整えるには巨額の費用が必要だ。そこでベトナム政府が注目するのが、下水道インフラに頼らず、低コストで排泄物を処理できる方法。とくに、日本の商社が提案した正和電工のバイオトイレに強い関心を抱いた。バイオトイレはオガクズと微生物の力でし尿を分解。必要な電力はわずかで、特殊な薬剤も必要としない。莫大な費用を投じて下水道を整備することなく、環境に優しい方法で問題を解決できる。
これまでベトナムでは正和電工、外務省、商社、現地の自治体などが協力して、バイオトイレの実機を現地に持ち込んで調査を行ってきた。橘井社長は、今回のベトナム訪問でより多くの人たちにバイオトイレの使用方法や導入の利点を理解してもらい、現地の環境問題解決に力を尽くしたいとの考えを示す。このほかバイオトイレについては、北極海に面したロシアサハ共和国や、インド国鉄でも導入の構想が浮上している。サハでは過酷な気候のためにトイレが家の外に設けられており、冬期にはいったんマイナス40度、50度の野外を通って用を足さなければならない。屋内でのトイレ設置は住民の長年の悲願であり、大統領顧問がバイオトイレの設置に関心を寄せているという。
このように、正和電工は内外で積極的なセールス活動を繰り広げているが、その成否を左右するのが社員のプレゼンテーション能力。朝礼の時間を活用して、営業職だけでなく事務職の社員も順番にパワーポイントを活用したプレゼンに挑戦することで、全社一丸での営業力アップを目指しているという。
「排泄物の処理は人類が抱える地球規模の課題。マイクロソフトのビル・ゲイツ会長も巨費を投じてこの問題に対処しようとしています。バイオトイレでクリーンな環境の実現を後押ししたい」