バイオトイレで環境問題解消 独自製品造りに自負
バイオトイレを販売するようになった経緯は。
家電製品一本だった。車に商品を積み込んで、北は稚内まで赴き、行商のように営業に
奔走していた。しかし45歳の時に胃がんを患い、それまでの営業活動が突如難しくなった
。
別の事業を考える中、胃の一部を切除したことで食事を残すようになり、生ごみ処理に
興味を持った。ある大学の先生に相談していると「便も生ごみと一緒なんだから、トイレ
を造ったらどうだろう。でも誰も手を出さない」と聞いた。そっちの方が面白そうだ、と
すぐに調べ始めた。
するとバイオトイレの先駆者だった長野県のメーカーにたどり着いた。現金1000万円を
用意し、自分用に1台と、「北海道で売りたいから」と併せて数台仕入れた。
しかし、2年後にメーカーが倒産してしまった。自分で売るしかないと決意し、意匠権
を買った上で製品を改良。当社の商品として販売し始めた。2種類しかなかった製品は今
では多岐にわたり、特許も21件取得した。
苦労した時期は。
水の代わりにおがくずで汚物を分解し、臭いを発生させないのがバイオトイレの特長。
しかし売り始めてから10年間は、全く相手にされなかった。なぜなら誰もトイレに困って
いないから。家電製品の利益で、どうにか賄っていた。
注目を浴び始めたきっかけは、富士山5合目で当社の商品を使ってもらい、登山客のト
イレ問題解消に一役買ったことだ。それから下水道のない山岳地や公園、建設現場などで
も使用されるようになった。東日本大震災の時には避難所用の製品も供給している。
これまでに国内外で約4000台を販売した。現在の売り上げは、家電製品と並ぶ規模にな
っている。
今、力を入れていることは。
能登半島地震を受けて、断水時でも使用できる大型公衆トイレを開発した。公園や学校
、道の駅など避難所になるような場所に置いてほしい。
道内の建設現場にもさらに普及していきたい。SDGsや女性技術者への配慮、労働環境
を整える上で非常にお薦めだ。国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録さ
れている。
バイオトイレに加え、下水道不要の浄化装置も販売している。特に下水道の整備が遅れ
ている開発途上国でニーズがあり、ベトナムなどで実際に使われている。日本国内におい
ても下水道の維持に膨大な費用を要する現状がある。下水道だけに頼らない新たな選択肢
として強く提案したい。
経営のモットーは。
小さい会社が大きい仕事をするためには「連携」がテーマだ。当社では従業員10人の少
数精鋭を続けている。欠員が出ても円滑に回る仕組みができている。
そしてわれわれの武器は知的財産だ。国や大きな企業と取引できるのは、特許があるか
ら。困り事を解決する独自製品を造っている自負がある。