バイオトイレ災害時に
山小屋や公園などに設置されているバイオトイレを大規模災害時に活用してもらおうと、旭川市のメーカー「正和電工」が5月の完成を目指し、開発に取り組んでいる。既に災害用の個室バイオトイレは製品化しているが、開発中のものは一度に複数人が利用でき、1日に500回程度使える大型タイプだ。きっかけは、能登半島地震だった。(黒田高史)
旭川の会社 大型タイプ開発中 能登地震きっかけ
バイオトイレはし尿の9割を占める水分をおがくずで吸収して蒸発させ、残りを微生物で分解する。おがくずの脱臭効果で臭いはほとんどなく、設置が面倒な下水管などの配管も不要だ。水利が悪く、し尿処理が難しい山間部や島しょ部などで普及が進んでいる。
正和電工の橘井敏弘社長は、元日に自宅で過ごしていた際、能登半島で大きな地震が起きたことを知った。無数の家屋が倒壊し、道路は寸断、断水で住民は厳しい生活を強いられるなど次々と明らかになる被害に衝撃を受けた。と同時に、「トイレは大きな問題になる。自分が力にならなければ」という思いが湧き、大規模災害用の大型バイオトイレの開発を決意したという。
大型バイオトイレは長さ約8㍍、幅約2㍍で、四つの個室と、おがくずなどの備品の保管庫を備える。夜でも安心して利用できるよう、人感センサー付きの照明や暖房便座、警報ベルなども付く。10㌧トラックに載せて運搬し、クレーンを使って設置することを想定しており、つり上げる際に一定の強度を保つようなフレームで設計している。
完成後、正和電工は国や自治体に説明し、大型バイオトイレを市街地の公園などに置いて日常的に利用してもらうことを考えている。まずは住民に使い方に慣れてもらった上で、備蓄資材に加えてもらえないか提案するという。
橘井社長は「災害はいつどこで起きるかわからない。トイレは食料と同様に重要だ」と強調する。