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北海道新聞2024年3月8日(金曜日)に弊社が掲載されました 2024.4.15

災害用トイレ 高まる関心
水使わず分解、下水道に直結・・・
種類さまざま在宅避難用も売れ行き好調

 能登半島地震の被災地では、断水などによりトイレが満足に使えない問題が、改めて浮き彫りとなった。寒冷地の道内では、凍結で水が使えず、避難所だけでなく、自宅でも災害時のトイレ問題がさらに深刻化すると予想される。上川管内では、水が不要の「バイオトイレ」や下水道に排せつ物を直接流す「マンホールトイレ」など、官民で災害時の対策が進んでいる。

 バイオトイレは、便槽内のおがくずに入った尿や便を、微生物が水と二酸化炭素に分解。ほかの水分も蒸発する構造になっている。尿や便の水分で分解が進むため、排せつ物を流すための水も不要だ。

 旭川市の正和電工では、1995年からバイオトイレの開発、製造販売を手掛けている。これまで、多いときで月50件程度の資料請求があったが、能登半島地震を機に「実際に配備するので注文したいという内容に変わってきた」(橘井敏弘社長)という。道内外の自治体からも注文や問い合わせも増えているという。

 同社では、介護や災害向けの家庭用から、仮設トイレ型などまで数百種類のバイオトイレをそろえる。橘井社長は「町内会単位で普段から公園のトイレとして配置しておけば、災害時にも対応できるのではないか」と提案する。

 管内の各自治体では、避難所用に簡易トイレを備蓄しているが、さらに「マンホールトイレ」の配備を進めるところもある。

 東神楽町では、今月完成するコミュニティセンター(旧トレーニングセンター)の敷地で、カーポート下に四つのトイレ用マンホールを設けた。災害時には、マンホールの上に便器とテントを設置し、排せつ物を排水管を通じて下水管に流す仕組みだ。町の担当者によると「断水時でも自家発電機を使って地下水をくみ上げ、下水管に流せる」という。

 同町では、今夏に完成する役場庁舎などの公共施設機能を集約した複合施設「はなのわ」に隣接する防災広場の車庫内にも五つのトイレ用マンホールを設置。こちらは一定量をためる方式でくみ取りが必要という。

 旭川市でも一時避難場所の体育館を備えるなど防災拠点となっている東光スポーツ公園に140個のマンホールを設置。今後、テントや便器の準備を進めていきたいとする。

 避難所だけではなく、自宅での在宅避難を想定した備えへの関心も高まっている。

 ホームセンターのDCM春光店(旭川市)では入り口付近に防災コーナーを設け、簡易トイレ関連商品を取り扱っている。

 袋を既存の便器に取り付けて凝固剤を入れるタイプや、折りたたみ式の段ボールでつくる便座、排せつ時に体を隠す専用のポンチョなど約40種類をそろえる。防災トイレ関連商品の1~2月の売り上げは、道内の店舗全体で前年同時期の2・5倍といい、同店の鈴木和彦店長は「家族の人数の避難日数分をそろえるニーズが増えている」と話す。

 災害時のトイレの重要性について、能登半島地震で災害派遣医療チーム(DMAT)として支援に入った旭川医科大学肝胆膵・移植外科の高橋裕之助教は「トイレを控えようとして水分を取らないと、血栓症のリスクが高まるといった問題も起きる。トイレ環境は重要」と強調する。

 派遣先の石川県珠洲市では、山間部で土を掘って用を足し埋める人や、井戸水を利用して流す人もいたとし、高橋助教は「トイレがないとストレスを感じる人がいる。ポータブルトイレなどの備えが必要だと感じた」と話している。(桜井則彦、大井咲乃)