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帝国ニュース北海道版22年8月号に弊社が掲載されました 2022.8.26

第389回 社長interview
バイオトイレで世界の水をきれいにする

水を使わず、水を汚さないバイオトイレ「Bio-Lux」の開発、販売を手がける正和電工(株)(旭川市)は、次々にアイデア商品を生み出し、地域の課題解決に貢献している。6月9日には一般社団法人日本建築材料協会主催の「建築材料・住宅設備総合展 KENTEN2022」で日本建築材料協会賞を受賞。バイオトイレの普及を通じて、環境問題の解決に取り組む当社の橘井敏弘社長に、これまでの歩みと今後の展望について聞いた。

(聞き手:札幌支店情報部 松田尚也)


――照明器具などの卸売を手がけていた御社がバイオトイレの開発に乗り出したきっかけは。
社長兼トップ営業マンとしてがむしゃらに働いていた45歳の時に胃がんを患い、胃の5分の4を切除しました。体力的に走り回れなくなり、それまでの“売りに行く商売”を“買いに来てもらえる商売”に切り替える必要がありました。
 そこで時代の方向性を見ながらたどり着いたのが、環境というテーマでした。まず浄水器の販売からスタートし、次に生ゴミ処理機に目を付けました。どこのメーカーの商品を取り扱おうかと東京や大阪の展示会にも足を運ぶなかで、生ゴミ処理機と同じ原理でし尿が処理できるトイレがあると聞き、その存在を知ったのがバイオトイレでした。
 これは面白いと思い、当時長野県にあったバイオトイレメーカーを訪ね、製品を北海道で売らせてほしいとすぐに頼みました。数台を仕入れ販売を開始したわけですが、約1年後に長野県のメーカーが倒産してしまった。そこで私たちはそのメーカーから意匠権を取得し、バイオトイレを自社製品として販売することを決めました。地元・旭川のステンレス加工会社などとともに製品の改良を重ね、新たな特許も取得し、バイオトイレ「Bio-Lux(バイオラックス)」が誕生しました。


――バイオラックスの特徴を教えてください
 水を使わないことです。バイオラックスでは水の代わりに普通のおがくずを使います。し尿の全体量の約90%を占める水分は蒸発し、残った有機物はおがくずの中で微生物が分解します。特別な菌は使いません。おがくずは年に2~3回交換しますが、使用後のおがくずにはし尿に含まれていた無機物が付着しており、肥料として活用することができます。生ゴミの処理も可能で、トイレ室内は無臭です。室内に置くタイプから仮設用、業務用、家畜用など、種類も豊富に取り揃えています。


――バイオラックスはどのような場所で活用されていますか。
 屋外の公園や動物園、イベント会場、キャンプ場、工事現場、登山道など多岐にわたる場所に設置されています。近年は自然災害が多発しており、国においても災害に強い、まちづくりが進められていますが、水を必要としないバイオトイレは被災地の問題を大きく改善します。
 また、海外にも水不足に悩む地域や下水道が整備されていない地域も多く存在します。弊社にはそうした国から多くの見学者が訪れており、実際に海外企業にも販売しています。バイオラックスは水を使わず、水を汚さない環境にやさしいトイレですから、SDGsの推進にも貢献します。環境というテーマが重要度を増すなかで、バイオラックスに関する問い合わせもここ4~5年でとても増えてきています。
 加えて、建築基準法によって下水道処理区域内においては水洗便所以外のトイレが設置できないことになっていますが、国土交通省は仮設トイレについて、当該規定は適用しないと通知を出しています。今後は下水道処理区域内でも災害時の備えとしてバイオトイレ設置の需要が高まってくると見ています。


――シカの分解処理装置にも注目が集まっています。
 ある報道に触れて、駆除されたシカの処理が問題となっていることを知り、生ゴミ処理機の発想でこれを解決できないかと考え開発に着手しました。駆除した害獣の処理方法は埋めるか燃やすかの2択しかありませんでした。その状況を変えるのが、われわれの分解処理装置です。バイオトイレと同様に、この装置もおがくずの力を活用します。駆除したシカの死骸をそのまま投入すると、約2週間で太い骨だけを残して分解されます。さらに残った骨を砕く破砕機も開発しました。砕いた骨は分解処理装置に再投入することで分解されます。
 埋める・燃やすといった処理方法は動物の死骸の裁断が必要だったり、焼却施設の整備が必要だったりと作業負担が大きいのが実情です。われわれの分解処理装置はそうした負担の軽減にもつながります。道外の自治体にも納入しており、イノシシなどの処理に使用されています。


――現在新たに開発を進めている製品はありますか。
 ホタテの貝殻の粉砕装置を開発しています。ジューサーミキサーの発想で、投入後5分間で粉々になる機械です。粉砕後の粉は10マイクロメートル以下になります。地方の加工場でも導入しやすい適正なサイズと価格を実現した装置となっています。
 また、駆除シカの骨を砕く破砕機を応用し、ラーメン店向けの骨破砕機も開発中です。砕いた骨からスープを取ることで、煮込む時間の短縮や燃料代の軽減にもつながることが期待できます。もちろんサイズはラーメン店の厨房に置けるようにします。まだ改良改善を重ねなければなりませんが、ホタテ貝殻粉砕装置の次に売り出していこうと考えています。


――今後の展望をお聞かせください。
 日本経済新聞の広告などを通じて商品の情報を広く発信し、国内はもちろん海外にもバイオトイレを普及していきたいと考えています。世界的にもトイレ環境の改善に向けた動きが活発化しており、私としては今後、バイオトイレの普及率が文明のバロメーターになると思っています。


――本日はありがとうございました。