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The Environmental Newsに弊社が掲載されました 2018.9.12

バイオトイレと新浄化装置 ベトナムで実証試験、汚濁負荷低減効果を確認

 国際協力機構(JICA)中小企業海外展開支援事業により、2015年12月18日から18年5月16日まで、正和電工は、ベトナム・クアンニン省内の世界自然遺産ハロン湾やバイトゥーロン湾国立公園沿岸地域に、「バイオトイレ」と「新浄化装置」を導入し、その効果について実地調査した。
 ハロン湾はベトナムの極めて重要な観光資源である。しかし、沿岸地域の急速な開発による生活排水の増加や観光船からのし尿の垂れ流しにより、水質汚濁をはじめとした環境破壊が顕在化しつつある。深刻な環境汚染が続いていることからハロン湾については世界自然遺産登録取り消しの警告を受けており、観光産業への影響が懸念されている。同時に地下浸透した排水が井戸水に流入しており、周辺住民の健康被害も問題となっている。以上のことから、同地域において、観光資源の保護と観光産業の持続的発展を踏まえた開発が求められている。
バイオトイレは、便槽におがくずを入れ、使用後撹拌して加熱、し尿の水分を蒸発させ有機物を分解する、排水が発生しないトイレ。おがくずには無機分が残るため、年2~3回交換して肥料として利用できる。
 一方の「新浄化装置」は備長炭を担体として利用した生活排水用浄化槽で、1時間おきに1時間の酸素供給を行い排水する方式である。
 現地には、バイオトイレを20台(観光船3台、船着場3台、小学校3台、一般家庭に11台)、新浄化装置を一般家庭に11台設置した。16年4月より設置工事を開始し、6月中旬には全ての地域において設置工事が完了し、16年9月~17年9月までバイオトイレと新浄化装置のモニタリングを実施した。

調査の結果1.バイオトイレ
 調査項目はおがくず中の水分、PHなどを調査した。バイオトイレでは好気性微生物が優位に働き、アンモニア臭などの臭いがしない領域として含水率65%以下、PH8以下を成果指標とした。
 小学校のバイオトイレにおけるおがくずの含水率は50%以下、PH7以下であり、良好な結果が得られた。
 一般家庭には、おがくずを撹拌するため電動式と手動式2種類を導入、共におおむね管理値以下であり順調な稼働が確認された。
 船着場においては管理値以上の含水率とPHになったことがあったが、これは使用回数が多かったためと考えられ、おがくずを交換することで対応できる。

調査の結果2.新浄化装置
 調査項目は流入水、処理水のPH、BOD、全窒素、全リン、大腸菌群などである。新浄化装置の成果指標として、浄化槽法の法定検査での水質基準や環境省環境技術実証事業の結果から項目ごとに処理目標値を設定し比較した。BODについては、目標値に満たなかったものの処理前後の濃度が低下していることから、新浄化装置による有機物の処理が行われていることが示された。
 また、公共用水域に流入する生活雑排水による汚濁負荷の削減を評価するために、BODの汚濁負荷量を算出し、新浄化装置による除去率を示した。その結果、BODの平均除去効率は51.5%であり、新浄化装置による50%以上の有機物の負荷低減効果が示された。

調査のまとめ
 本事業実施前の案件化調査では、ベトナムにおいて普及しているセプティックタンク(排水をタンク内で沈殿させ上澄みを浸透する装置)の処理能力はわずか4%であった。これに対し、今回のシステムでは、バイオトイレ導入によりトイレからの汚濁負荷はなくなり、さらに1日1人当たりの生活雑排水による汚濁負荷量はBOD測定値より22.4グラムと算出されるので、新浄化装置による生活雑排水を処理することで、BODで68.9%の汚濁負荷量が削減できることが示された。
 し尿をバイオトイレ、雑排水を新浄化装置で処理する、当社の分散型排水処理システムは、下水道が未整備の地域への導入が期待されている。この整備によって、河川などの公共用水域の水質の改善が見込まれる。

分散型排水処理技術としての期待
 世界では、中国の習近平国家主席やインドのモディ首相が主導する「トイレ革命」でトイレの設置が進んでいるが、下水道が未整備の地域で水洗トイレ方式が普及拡大している場合が多い。トイレ排水が地下浸透式では地下水や河川の汚染につながり、水環境の悪化が懸念される。当社の分散型排水処理システムは公共用水域を汚さず、きれいな飲料水の確保に大きく貢献できるため、ベトナムをはじめ多くの国々で普及拡大が望まれる。